TXの開通を機に2005年8月から2007年3月まで運行されていた急行バス
急行バスの概要
桜川市内の主要なバス停に停まり、岩瀬〜つくばを65分で結んでいた。いま同じ区間を路線バスで移動すると、どんなに乗り継ぎがスムーズでも120分掛かる。
つくば急行バスはマイカー並みのスピードで移動できる貴重な移動手段で、つくばへの通勤通学は勿論、TXに乗り換えれば最速2時間で東京に行ける優れもの。6時から22時まで運行しており、始発に乗れば8時前に東京に着くので、通勤にも使えると良いことずくめ。
しかし、市は僅か1年ちょっとで運行を打ち切った。
急行バス廃止
1年ちょっとで利用者が定着するわけがない。数年走らせてダメなら見限るのも仕方ないが、市は利用促進策も何もせずにただ見殺しにした。
急行バスが市の広報誌に出たのは運行開始と廃止のたった2回だけ。真壁なんて観光で売り出す絶好のチャンスだったのに「急行バスで真壁へ」とかそういう動きもしなかった。
市の完全なる周知不足
ハコモノ造るだけで維持には興味のないお役所仕事そのものだった。
路線バス全廃
中田市政はこの後も「公共交通は民間で勝手にやってくれ」と無関心を貫いた。
その結果、2008年には岩瀬駅〜真壁駅、2011年には真壁駅〜筑波山口の一般路線バスが廃止。その間に下館駅や下妻駅へのバスも廃止され、桜川市を通る路線バスが全滅。
なかでも真壁は公共交通を失い、陸の孤島となった。
今更気づいた桜川市
少しの間は「デマンドバスでなんとかなる」と強がっていたが、しばらくすると「流石に公共交通無しはマズい」と騒ぎ始めた。
そこに2013年に中田市長が落選。「市民の交通の確保」を公約とする真壁出身大塚秀喜氏の当選が重なり、2016年からコミュニティバスを走らせることになった。
真壁〜筑波山口のみ、つくばに行くには乗り換えが必要、と急行バスとは程遠いものとなったが、本数は1日16本で運賃200円と一応頑張っている。真壁出身の市長だからこそ、公共交通がないことのマズさを理解したのだと思う。これに関しては真壁のナイスプレーだ。
場当たり的な対応をしてきた桜川市役所も流石に反省したのだろう。岩瀬出身でも何もしない中田市政よりは百倍マシだ。
2017年には岩瀬地区まで延伸し、9年ぶりに岩瀬〜つくばが繋がった。
岩瀬〜つくばの運賃が500円と、運賃面はよく頑張っている。真壁や大和から水戸・下館に通学しやすくなったほか、観光客が岩瀬駅経由で雨引観音や真壁に向かえるようになるなど、観光への貢献も大きい。利用者数は岩瀬延伸によって4倍以上増加した。
でも、まだ岩瀬町民には旨味が薄い。
岩瀬町民にとって真壁や大和への用事なんて無いに等しい。市役所が大和に集約されれば多少は大和に行くかもしれないが、その程度。用事があるとしたらつくば市内だ。
しかし、岩瀬〜つくばでは路線バスなんて使えたものではない。各駅停車である以上路線バスの遅さはどうしようもないのだが、高くて遠回りでも鉄道のほうが早いため、結局岩瀬町民はバスを利用する機会がない。
桜川市バスは運行に年5000万円掛かっているが、現状、利益を享受できているのは真壁。もちろん真壁町民には有り難いものだろうし、市全体としては大きな利益を生んでいる。廃止しろなんて言うのは言語道断だ。
でも、もう少し岩瀬にも旨味が欲しい。
大塚市長は巡回バスを走らせてみたり、つくばセンターへの再乗り入れに興味を持ったりと、中田市政の失態を取り戻そうと頑張っているが、もうあの急行バスは戻ってこない。
つくば行き急行バスという千載一遇のチャンスをドブに捨てたら市内の路線バスが全滅し、あとから焦って自力でバスを走らせるハメになる。
桜川市の場当たり行政の象徴だ。